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「えー、傷付くなぁ。俺は別にお前となら疑似でも現実でも大歓迎だけどね!」
「――戯けてんじゃねえわ!」
未だ眉間の皺も引っ込まず、思い切り怪訝な顔でヤツを見やるも、全くもって諦める気配もみられない。それどころか、両手を眼前で合わせ、拝み倒す勢いで、
「なぁなぁ、頼むよー! お前に美人の方を譲るからさ。一緒に行こうぜー! 何せ俺、自分の興味ある対象じゃないとレポート書けねえ体質なんだよー」
こいつにしては珍しく、下手に出てまでそのカップルとやらに憑きたいというのだから、そのターゲットのことが相当気に入ったというわけなのか。
「ほお、珍しいこともあるもんだな。俺はまたてっきりお前さんがその『美人』の方を担当してえって言い出すのかと思ったんだが。断っておくが、現地入りしてからやっぱり交代してくれ――なんてのはご免だからな」
「ああ、分かってる。ぜってーそんなこと言わねえからさ! つーことで、付き合ってもらってもいいんだな?」
「まあ……そこまで言うなら仕方ねえか」
「おーし! 決まりな! じゃ、早速出掛けようぜ」
「あー、それから! 俺りゃー、お前のレポートの手伝いはしねえからな!」
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