夏を連れ去る秋の蝶

4/43
前へ
/43ページ
次へ
「えー、傷付くなぁ。俺は別にお前となら疑似でも現実でも大歓迎だけどね!」 「――戯けてんじゃねえわ!」  未だ眉間の皺も引っ込まず、思い切り怪訝な顔でヤツを見やるも、全くもって諦める気配もみられない。それどころか、両手を眼前で合わせ、拝み倒す勢いで、 「なぁなぁ、頼むよー! お前に美人の方を譲るからさ。一緒に行こうぜー! 何せ俺、自分の興味ある対象じゃないとレポート書けねえ体質なんだよー」  こいつにしては珍しく、下手に出てまでそのカップルとやらに憑きたいというのだから、そのターゲットのことが相当気に入ったというわけなのか。 「ほお、珍しいこともあるもんだな。俺はまたてっきりお前さんがその『美人』の方を担当してえって言い出すのかと思ったんだが。断っておくが、現地入りしてからやっぱり交代してくれ――なんてのはご免だからな」 「ああ、分かってる。ぜってーそんなこと言わねえからさ! つーことで、付き合ってもらってもいいんだな?」 「まあ……そこまで言うなら仕方ねえか」 「おーし! 決まりな! じゃ、早速出掛けようぜ」 「あー、それから! 俺りゃー、お前のレポートの手伝いはしねえからな!」
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加