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「そんなことないよ。大人になった。今日の服もすごい可愛いよ」
臆面もない男性のセリフに、女の子がかあっと顔を染める。
「じゃあ、行こうか」
男性が歩き始めると、女の子がTシャツを掴んだ。
男性が止まって振り返る。
「見失わないように」
「どうせなら、手つなぐ?」
出された手を女の子は全力で押し返した。
「いい、大丈夫! Tシャツがいい!」
はいはい、と笑いながら男性は女の子を置いていかないようにゆっくりと横に並んで歩き始めた。
なんだ、なんだ、この青春の1ページみたいなのは!
三種三様の待ち合わせからの一連の流れに智也は身悶えるしかない。
周りは甘い待ち合わせをしているっていうのに!
「トモ、ごめん! 待たせた」
智也の目の前に現れたのは、どう見ても可愛いとは言えない、ごつい男。むしろ自分よりも背が高いし、イケメンなので自分が引き立て役にしかならない。
「なんだよ、なんだよ。悪かったって」
ジトーっとした目で見ていたら、真也が必死で謝ってくる。
「今さー、ここで待ってたカップルたちのイチャイチャを目の当たりにしてさー」
「それは、それは」
「俺の目の前には、こんなモサいやつしか来てないのに!」
「悪かったな、モサくて」
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