4人が本棚に入れています
本棚に追加
看板近くまで来て辺りを見回した。待ち合わせの人が大勢いる。
(うーん。いないなあ)
時計を見ると、待ち合わせ5分前だ。ポーチから鏡を取り出して、髪を整える。大丈夫だろうか、変じゃないだろうか。髪くらいは、とアップにしたけれど、形を整え直したくて仕方がない。より悲惨になったら逃げ出してしまいそうな気がするので、そこはぐっとこらえる。ハンカチで汗を抑えた。キャミのワンピースは失敗だった。自分が汗臭くないか入念にチェックしたいところだけれど、そんなはしたないマネはできない。小さい制汗剤を取り出して首に吹きかける。幾分、ましにはなるだろう。
歩いていた時に上がっていた息は落ち着いてきたのに、自分の心臓の音は跳ね上がる一方だ。
連絡が入ってないか、何度もスマホを確認する。すぐに会いたいのに、連絡が入っていないことに少しホッともする。
ワンピース、変じゃないかな。ちょっと露出しすぎたかな。上、羽織ったら変だよね。屋台のたこ焼きのソース、つけたりしなきゃいいな。手くらい繋げるようになるといいんだけど。
会えたら会えたで、自分のこの心配と心臓の音が臨界点を突破するに決まっているからだ。
最初のコメントを投稿しよう!