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ワンピースの女の子が、男の子の顔を覗き込む。
「電車遅延した。しかも、スマホ、家に忘れちゃって」
「災難だったねえ」
事故じゃなくてよかったよ、と続ける女の子を眩しそうに見る。
「さあ、行くか。早くしないと花火の場所取れなくなるぞ」
「え? そんな時間、急ごう、急ごう!」
男の子が女の子の手を取る。
ワンピースの子は、はっと動きを止めてその手をまじまじと見ると、顔を赤らめた。
なんて、初々しい。
「迷子にならないようにな」
二人は寄り添って歩き出した。
もう1人は、気の強そうな美人の女性。きっちり髪を結い上げていて、どう見てもプロ仕様だ。
「やっと来たかあ」
「ほんと、ごめん!」
女性が目の前で手を合わせている。向かいにいるのは、これまた浴衣姿の男性だ。
眉間にシワが寄っているが、あまり怖く見えない。
「いつもいつも俺に説教してるくせになあ」
「ごめんてえ。機嫌なおしてー」
美女が男性の腕をガンガン揺する。
「わかった、わかった。かき氷で手打ちな」
「またー。太るよ」
「お祭りの時くらい甘いもの食わせてくれ」
「眉間にしわ寄せながら、そんなこと言われても」
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