待ち合わせの後はそばにいて

9/11
前へ
/11ページ
次へ
 同じような表情を女性がしてみせる。ひょっとこのように口を尖らせて、目は上を向いている。眉間にはくっきり3本線だ。 「……」 「……」  男性と同時に笑い始めた。 「お前、ほんとそういう顔うまいな」 「えへへー」 「三十路にもなって、その笑い方可愛くないからな」 「うるさいなあ。いいでしょ。てか、浴衣くらい褒めなさいよ」 「はいはい、お美しいです」 「あー、心がこもってなーい!」  なんとも楽しそうだ。口では軽く喧嘩しながらも、二人は手を取り合って、花火会場へと入っていった。  最後の一人は、背の高い男性だった。ジーパンにTシャツ1枚でなんともラフな格好だ。  兄のようにも見えるが、なんとなく間合いが兄弟ではない。 「まじごめん、めっちゃ遅れた!」  髪を二つに結んだ女の子が半ば泣きそうな顔で、男性を見上げる。 「遅いよー」 「わー! 泣くな! ごめんて!」  必死に頭を撫でる男性を半ば恨めしげに見上げる。 「私、あと1時間くらいで帰んないとだからね」 「まじか! じゃあ、急ご。腹減ったよな? 何食う?」 「たこ焼きとかき氷!」  女の子が手をあげて即答する。その仕草に、男性は思わず笑顔だ。  その笑顔を見て、女の子は決まり悪げに手を引っ込める。 「相変わらず元気がいいなあ」 「どうせ、子どもっぽいですよ」  ポンポンと男性が女の子の頭を叩く。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加