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同じような表情を女性がしてみせる。ひょっとこのように口を尖らせて、目は上を向いている。眉間にはくっきり3本線だ。
「……」
「……」
男性と同時に笑い始めた。
「お前、ほんとそういう顔うまいな」
「えへへー」
「三十路にもなって、その笑い方可愛くないからな」
「うるさいなあ。いいでしょ。てか、浴衣くらい褒めなさいよ」
「はいはい、お美しいです」
「あー、心がこもってなーい!」
なんとも楽しそうだ。口では軽く喧嘩しながらも、二人は手を取り合って、花火会場へと入っていった。
最後の一人は、背の高い男性だった。ジーパンにTシャツ1枚でなんともラフな格好だ。
兄のようにも見えるが、なんとなく間合いが兄弟ではない。
「まじごめん、めっちゃ遅れた!」
髪を二つに結んだ女の子が半ば泣きそうな顔で、男性を見上げる。
「遅いよー」
「わー! 泣くな! ごめんて!」
必死に頭を撫でる男性を半ば恨めしげに見上げる。
「私、あと1時間くらいで帰んないとだからね」
「まじか! じゃあ、急ご。腹減ったよな? 何食う?」
「たこ焼きとかき氷!」
女の子が手をあげて即答する。その仕草に、男性は思わず笑顔だ。
その笑顔を見て、女の子は決まり悪げに手を引っ込める。
「相変わらず元気がいいなあ」
「どうせ、子どもっぽいですよ」
ポンポンと男性が女の子の頭を叩く。
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