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待ち合わせの後はそばにいて
夜がカーテンを閉めるようにだんだんと空を黒く染めていく。
いくつかの星と同じくして、道には浴衣姿の女の子がちらほらと輝き始める。
(やっぱり、浴衣着てくればよかったかな)
結花は自分の花柄のワンピースを眺めた。夏らしくて気に入っている柄だけれど、やはり浴衣の華々しさの前では、ワンピースの花もしおれているように見える。
(仕方ないよね)
浴衣の歩きにくさと浴衣を使う頻度とその金額についてこれでもかと説明し、着てくるなと言ったのは、結花がこれから会う人物だ。
少し急ぎ足で、人々の間を縫うように進む。今日は、ここら辺りで一番大きい花火大会だ。待ち合わせは、会場の入り口、看板の横。去年は友人と来たけれど、駅で待ち合わせしないのなら、そこで落ち合うしかない。中に入ってしまうと、予想以上の人混みで会えるまでにだいぶ時間がかかってしまう。
幾人ものカップルが手を繋いで仲睦まじく歩いているのを見ると、なんだかこの道のりの分だけ損をしている気になった。
来年は駅で待ち合わせにしよう。
自分の中だけで、心に決める。
今回は、一緒に花火大会に来れただけで上出来だ、そう自分に言い聞かせる。
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