76人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
目覚めてから数日後、俺はようやくまともに動けるようになっていた
「ひとつ予定外のことがありまして」
片手だけで、上手く体を拭けないでイラつく俺の手から、ヤシンはタオルを取り上げて、体を拭きながら話し始めた
「僕が切られて、クロに回復して貰ってしまいましたよ。そのせいであなたが、あのような対価を払うことになった」
あのような対価?
なんだったか?
「あ、覚えてませんね?あなたは対価にクロと結婚してやると言いました」
「!!!!」
思い出した!
死ぬ気だったから、ちょっとどうでもいいって、ついうっかり…
「僕が助かるのに、あなたを人身御供にするなんて、予定外もいいところです。僕はあなたに、あなたの命を助けることで貸しを作らせようと思ったのに、逆に僕があなたに貸しを作るとは」
俺の体を拭くヤシンの手の力が、気の所為でなく強くなった。えーと、今なんか、凄いこと言われたような気がするのだが?
「クロはあなたと結婚する気満々です。そしてあなたは、老いぼれ達に「魔物を宿していた危険人物」と触れまわられて、よくない状況です」
「まあ、用が済めば、やっぱり余所者は追い出したいんじゃないのか?」
「だから、僕があなたを秘密裏に外へ逃がします。そして数年後に、僕がこの村を支配したら、呼び戻しますから」
ヤシンはまたあの笑みを浮かべた
もしかして、あの時俺から魔物が逃げて、ヤシンに入ったのではないか?そんなことを思わせるほど、ヤシンは恐ろしかった
最初のコメントを投稿しよう!