マノメ・ヨシユキ

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「俺が、そんなことを望んでいると?」 「君が生きる方法は、これしか無いんだよ。例え僕の子を産めなくても、君はコミュニティに行かずに済む」 「俺はあんたの子なんか産みたくない!」  0421の精気を失った目に光が生まれ、激しく吊り上がる。僕は咄嗟に、彼の右頬を平手打ちした。  がくんと崩れ落ちた、首元の襟を掴んだ。彼はびっくりとするほど体が軽くて、僕は襟を引っ張り上げると、彼の体をベッドに放り投げた。  ドンっと0421の体がベッドの上で跳ね上がり、バウンドする。彼が起き上がれないように、僕は勢いをつけて彼に馬乗りになった。 「ユキが助けた命の粗末にするのかい?」僕は囁いた。  僕の下でもがく彼の首を両手で掴んで、グッとベッドに沈めた。 「…子どもを産まされ続ける、くらいならっ、コミュニティで処分された方がましだっ」  0421の唇の端が切れて、血が滲んでいた。蹴り上げようとする脚に、僕は自身の脚を巻き付けて、捻じり上げた。心地よいうめき声がした。 「君を愛しているって、ユキが僕に伝えてくれと言ったよ」 『生きて絶対に帰るなんて、無責任なことは言えない。だけど』 『うん』 『愛しているって伝えて。ずっと私は、どこにいても、マサキを愛しているって。お願い、伝えて欲しい』 「……っ、愛しているんだったら、一緒に死にたかったっ!!」   0421の眦から涙がこぼれ落ちた瞬間、彼の体から力が抜けていくのを、僕は両手から感じ取った。彼の首から、そっと手を離した。僕はユキにやったように、0421の涙に塗れた両頬をそっと包み込んだ。  愛しているから、自分を犠牲にして助けたい。  愛しているから、自分一人だけ生かされたくない。 「君たちは、馬鹿だね」
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