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思わず否定すると、射殺すような強い視線とかち合った。背筋が寒くなる。何か言い返してやろうとする前に、体は実に正直だった。
アルファは生まれながらの支配者とは、良く言うもんだ。こんな奴と私が双子だと?ふざけんなよ。
私はズボンの上から太ももに、爪を立てた。
「双子?とんでもない。マノメ財閥の未来を担う、優秀なご子息様である貴方様とわたくしめのようなベータが双子だなんて、とんでもございませんわ」
「ユキ」
「今日は久々に外に出れたことを、感謝しますよ。マノメ様。外出日は決められてるのに、例外でお許しが出た。明日出兵だってのに、家族とさえ面会所でしか会えないんだ。こうやって外に出れたのは、マノメ様のおかげですよ。もう、思い残すことはありません」
「僕と君は家族だからね」
またマノメがどうでも良いことを訂正してきた。こいつは昔からそうだった。家族とかいうワードにやたら拘る。
初めて会ったのは、確か六歳の時。不在がちだった父親が、マノメを連れて来た。物事が理解できるようになった頃、私と母親の立場がよーく分かるようになったのだ。
マノメを紹介された後、二人でよく遊ぶようになった。そしてこいつは秘密話をするように、耳打ちしてきた。
『ねぇ、ユキのは誕生日は―月―日だよね?』
『?うん』
『僕もだよ。これってきっと運命だね』
まだ何も分かっていなかった頃の私は、純粋に嬉しかった。数年後には、父親が同じ時期に、二人のオメガを孕ませたという事実を理解して、微妙な気持ちになったもんだが。
「ユキ、覚えてる?」
「何を」
「昔、僕が言ったことを。愛で結ばれた関係と、血で結ばれた関係。どちらが強いかって」
「覚えて無い。てかそんなもん、どっちが強いか、上かと無いよ」
私は遠い幼い頃を思い出していたことを、打ち消した。時おり、この異母きょうだいと思考がリンクすることがあり、ぞっとさせられる。
マノメは片頬を歪ませた。平行型の二重に縁どられた、精密な瞳が細まった。まるでこちらの内面を読み取ったような、邪悪な笑みだった。
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