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言って部屋に引っ込み、すぐに戻ってきた御堂に 「つまらないものですが、どうぞ」 手渡されたのは熨斗のついた洗濯洗剤。ここは田舎だから引っ越しの挨拶も普通にする。けど、一人暮らしのマンスリーマンションでは挨拶なく出入りする人が多くなったし、僕は前の隣人に要らない、挨拶に伺って迷惑そうに玄関を閉められちゃって、暫く悲しみを引きずったから何か嬉しい。ホッとする 「ありがとうございます御堂さん」 イケメンは警戒すべき存在だけど、愛想の良さに好感が持てる。隣人といい関係を築くのはいいことだし 「あの、僕も」 買ってきたばかりの袋を探り 「良かったらどうぞ」 ビールを渡すと 「ありがとうございます」 御堂の顔に笑みが広がった。えヘヘ、喜んでくれて良かった。今日のビールは美味しいぞ、きっと。御堂に会釈して玄関に差し込んだ鍵を回し 「高木さん」 抜いた鍵を尻ポケットに入れ 「片付け頑張って下さい」 ドアノブを捻り開けたドアが 「ビールのお礼に夕食をごちそうさせて下さい」 バタンと閉まった。玄関を押したのは御堂。御堂はと見れば穏やかな笑みを浮かべ、わざと? 考えると心が痛む平穏さで僕んちの玄関に寄りかかってる 「いや、それは遠慮します。物々交換しただけなので、お気遣いなく」
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