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「ですが、引っ越しの挨拶の品と親切で頂いた品は違うでしょう? ご馳走させて下さい」
親切かあ。いい響きの言葉だなあ
誰かと約束してるわけじゃないし、六缶パックで買ったビールを持参して隣人と交流するのも悪くない。うん
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します。時間は・・・・・・」
御堂がふわりと笑った。きゅーん、胸が鳴る。切れ長な、長い睫毛に包まれた黒い瞳に僕を映す御堂の優しい微笑から、目が離せない
「7時頃でどうでしょう」
「あ、はい」
とにかく家に帰ろう。そして反省会だ。エイちゃんを思い出せ、隣人にときめくなんて
「お待ちしてます」
二度とあってはならない。僕だってずっとここに住むわけじゃないし、御堂だって引っ越してきたってことはいずれまた、出て行く
「はい。じゃ、後で」
御堂に会釈して、部屋に入った
「昼休憩入りまーす」
午前の受付は11時45分まで。午前最終車両の検査が終わるのはだいたい、12時10分くらい。午後は13時開始のため、検査場に5分前までには戻る。事務所で弁当を食べながらパソコンを起動し、検査に来た業者と個人車検の統計を出し、指定工場の登録台数も車種、年式と細かく分けてグラフにしていく
その間、防犯カメラのチェックも忘れない
個人車検だろう。女子が二人腕を組み、検査場の中をキョロキョロしながら歩いてる。僕の隣に弁当だけを手に座った同級生だけど、職場では後輩の西村が防犯カメラにチラリ、視線を向けてから
「俺は右の子だな」
椅子をガタガタ揺らす。あーもう、うるさい、相手してやるから貧乏揺すりは止めろ
「どっちも可愛いじゃない。選ぶ必要ないと思うけど」
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