14/14
前へ
/83ページ
次へ
「ないよ、一人も」 ごちそうさま、手を合わせ空の仕出し弁当を箱に返し、席に戻る。よし、仕事しよ。教本を開いたのに 「だったらプロで経験してみねえ?」 まだ解放されないらしい 「興味ないし、お金がもったいない」 「金なら出すって。男でも女でも綺麗どころ用意しててさ、信用を大事にするから一見の客は受け入れない店があるんだよ」 西村は後から、奢ってやっただろう、ネチネチとしつこく見返りを要求するタイプだ。一見の客を店に紹介できるってことは 「常連?」 「上得意様だ」 ふうん? 「よく遊ぶ金が続くね」 「うまいやり方があるんだよ。お坊ちゃんを脱皮する気があればやり方を教えてもいいぜ」 ろくな方法じゃないと思う。それに、いまの西村と職場の外でまで一緒に居たくない 「遠慮しとく」 「面白みのねぇお坊ちゃまだな」 仕事に集中しよ。検査場では業者と個人のレーンを分けている。さっきのあの子たちを西村に任せるのは、不祥事が起きそうで怖い。まあ、僕なんかが心配しなくても、眉を寄せて胃薬を飲んでる課長が調整するだろう 「なあ高木ってさ、大迫と親密な仲だったよな」 「普通の友だちだったかな」 「連絡取ってくれよ。西村雅史が久しぶりに顔見て話したがってるってさ」
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加