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僕たちの仕事は検査だけじゃない。自動車整備士育成のため講師をしたり、整備士国家試験の問題用紙を作ったりもする。でも
「高木くん三級の過去問見て、指導要項纏めてくれる」
「はい。課長」
僕には荷が重い仕事だ。整備士資格のない僕にあるのは知識だけ。実技を身につけ試験に挑む整備士の卵たちの未来への希望に輝く瞳が眩しくて、羨ましい
「最悪、火傷した」
分厚い三級整備士エンジン自動車と電気自動車教本を捲り、過去の受験者が苦手とした箇所を抜き出す僕の傍らまできて、薬を塗布した火傷痕をわざわざ見せる理由が分からないよ西村くん
「あのジジイども、俺に下廻りばかりさせやがって」
課長と先輩がギロリ、西村を睨んだ。西村と課長と先輩がイライラしてるから、事務所の空気がめっちゃ悪い
「陸運局の仕事とか、すっげえ楽なイメージだったのにくっそ怠ぃ。熱い臭い汚れるって求人票に書いとけよボケ」
求人票出したの課長じゃないし、怒りの向く矛先が違うよね。付箋を教本に貼り付け、過去問と照らし合わせ、ここだと思う箇所をパソコンに打ち込んでいると
「なあ、大迫と連絡取れたか」
ここ一週間、習慣となった質問をしてきた
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