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『コイツ死んじゃった』
ぷらーん
胴体は虫かごの中、エイちゃんがぷらぷら揺らすのはカブトムシの頭部
ギャアアアアアア!
ありったけの声をあげ、逃げ惑う僕をカブトムシの頭部を手に笑顔で追いかけてきたエイちゃんの非道っぷり。僕はあの日からずーっと、昆虫が苦手なのである
「動かないでよ、頼むから」
静かに、静かに
ジョジョーと放出したいのを我慢してチョロチョロと、蛾を見つめながら下半身は尿器と向かい合って用を足していると
「ちょっと、お兄さん」
背後から声をかけられた
人の羞恥を無視したデリカシーのなさと、蛾が飛び回ったらどうするという恐怖で頭に血がのぼる。もう、背中に張り付いていいから小声でお願い
「はい?」
小さな声で返事して、そーっと首を捻ろうとすると
「あ、そのままで。ちょっと伺いたいんですが、ここ辺で低学年の女の子連れた金髪の男を見ませんでしたか」
怪しすぎる
顔を見られて困る男の人捜しを手伝う気はさらさらない。けど幸いというか、たまたまというか、駅へ急ぐサラリーマンしか目にしていない
「いやー? この時間ですからね、子どもがいれば目につきます。記憶にないですね」
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