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「そうかい、ありがとよ」 声が大きい! 走るな! 靴音が響く! 「・・・・・・っ」 羽をピクッとさせ、じわりと横に動いた蛾はまた動きを止めた。あーもう、今日はついてない。ジッパーをあげ、ベルトを締め、ちょぽちょぽ水で手を洗い、浄水を押してダッシュでトイレの外へ出た僕は 「ふぇっ ひっく」 夜空を見上げた。ほんっと今日はついてない 声はトイレ裏の、生い茂った木の葉で覆われた花壇をの奥から聞こえてくる。ジャリ、踏みしめた砂が鳴ったと同時にピタリ、すすり泣きも止まった。じーっと目を凝らしてみたけど、奥は鬱蒼とした暗闇で何も見えない もしや、金髪男に口を塞がれた? 人気のない暗がりに幼児を連れ込むのは古来から、変質者と決まってる。証拠が必要だ。スマホのカメラ機能を作動させ、闇に潜む昆虫にビビる気持ちを抑え踏み込んだ瞬間 「ヘビに食われるぞ」 僕は、飛び上がった。昆虫はほぼ嫌いな位置の苦手だがヘビは大っ嫌い 「ヒャイ?」 逃け出そうとした腕をぐっと捕まれた。ええー、どうして僕を茂みに引っ張り込むの 「ヘビヘビヘビはどこ」 「静かにしろアホ。騒げば本当にヘビが寄ってくるだろう」
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