40人が本棚に入れています
本棚に追加
「この人知らないもん」
お互い様だガキ
「このお兄さんに交番へ連れて行って貰え。自分の名を名乗れば、すぐにお父さんが迎えに来る」
「お兄ちゃんがいい」
「迷惑だ」
冷たい声にハッと息を飲む。震える息を吐き、くすん、小さく鼻を啜った女の子が可哀想だ
「ちょっと、そんな言い方しなくても」
「アホは黙ってろ」
あ、似てる
僕と話す時はぶっきらぼうだけどいつも、声に冷たさがなかった。特別扱いがちょっと嬉しかったりしてたのを思い出す。やっぱり、この男はエイちゃん? 一人っ子だったエイちゃんに妹ができたのかな、可愛げのなさはそっくりだと思いながら女の子を横目でみた
「ねえ、隠れなきゃならない事情を教えてよ」
「家庭の事情だ。他人に話せない」
ああ、そーですか。エイちゃんが僕にも内緒で引っ越したのを思い出した。可愛い顔で皆を煙に巻く意地悪で秘密主義な嫌なやつのせいで、中学の三年間『自分だけ会ってるのよ、オカマ野郎!』女子に敵視され続けた恨みは大きい
「だったら家族で解決しなよ。僕は帰らせて貰うね」
憤然と立ち上がりはしたものの、暗闇が怖くて動けない
「さっさと帰れば?」
最初のコメントを投稿しよう!