6/14
前へ
/83ページ
次へ
「この人知らないもん」 お互い様だガキ 「このお兄さんに交番へ連れて行って貰え。自分の名を名乗れば、すぐにお父さんが迎えに来る」 「お兄ちゃんがいい」 「迷惑だ」 冷たい声にハッと息を飲む。震える息を吐き、くすん、小さく鼻を啜った女の子が可哀想だ 「ちょっと、そんな言い方しなくても」 「アホは黙ってろ」 あ、似てる 僕と話す時はぶっきらぼうだけどいつも、声に冷たさがなかった。特別扱いがちょっと嬉しかったりしてたのを思い出す。やっぱり、この男はエイちゃん? 一人っ子だったエイちゃんに妹ができたのかな、可愛げのなさはそっくりだと思いながら女の子を横目でみた 「ねえ、隠れなきゃならない事情を教えてよ」 「家庭の事情だ。他人に話せない」 ああ、そーですか。エイちゃんが僕にも内緒で引っ越したのを思い出した。可愛い顔で皆を煙に巻く意地悪で秘密主義な嫌なやつのせいで、中学の三年間『自分だけ会ってるのよ、オカマ野郎!』女子に敵視され続けた恨みは大きい 「だったら家族で解決しなよ。僕は帰らせて貰うね」 憤然と立ち上がりはしたものの、暗闇が怖くて動けない 「さっさと帰れば?」
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加