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 心に残った青色、というものが、私の記憶の中にはいくつかある。  例えば、初めて一人で乗った飛行機の窓から眺めた青。  視界の下方の深い、海の青色が、奥に向かうにつれて淡くなっていき、いつの間にか空との境界を越え、薄い青色の空を辿って、濃い青色となって視界の上方へ戻ってくる。  漂っている雲さえも、青みを帯びて見えるほどの鮮明な青。空と海がわからなくなるような曖昧な青。どこまでも続く、広い青。限られた窓枠の中の、狭い青。  その、非日常的で、日々の中にいつもある、力強く繊細な青色は、あの日に飲んだオニオンスープの香りを伴って、時折、私の心を訪れる。  例えば、初めて図鑑の紙越しに姿を捉えたモルフォ蝶の青。  人の心を奪うためだけに創成されたかのような蝶は、羽を大きく広げ、写真の中に鎮座する。羽ばたいている姿を直に見たことはないが、この青い生物の舞う姿を想像すると、美しく、そしてどこか不気味にも思えた。  自然界には不釣り合いな、自然が生み出した奇跡の青。懸命に生きる、作り物のような青。  蝶の正しい名は忘れてしまったが、かつて遭遇した、出会ったことのないその青を、直接この目で見たいと思い、そして出来れば、見たくないとも思う。
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