11人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、ラムネが飲みたいわ」
彼女は先程まで見つめていた青空を、そのまま映したような瞳で私を見た。病弱な体に似合わぬ、明るい声で彼女はラムネを要求した。
「炭酸はあまり好きじゃないって言ってなかった?」
彼女は青白い頬をぷくっと膨らませ、「ラムネ、ラムネ」と連呼した。
「だって、病室で開けて零したら大変だろう」
「中庭に出ればいいじゃない。今日はいつもより元気よ」
私は「どうだかなぁ」と首を捻った。
「炭酸は苦手だけど、ラムネは好きなの」
そう言うと、彼女は再び空を見た。ベッドから上体だけを起こして1日のほとんどを過ごす彼女の要求は、難しいものではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!