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「さて、そろそろ飲みましょう」
私は頷きながら、ビンの口に付属の部品を差し込んだ。
グッと力を入れると、プシュッと音を立てて炭酸が弾け、ビー玉が降下していく。太陽の光を反射させながら、ビー玉はビンのくぼみにカランと落ちた。余韻を残すように、空を目指す気泡が美しい。
「和くん。もう少しで、夏が終わるのよね」
「そうだね」
「明日も来てね。寂しいからさ」
「もちろんだよ」
彼女は私の隣に座り、肩にもたれかかった。
「来年も一緒に飲もうね」
「……あぁ、そうしよう」
口に含んだラムネが私に一時の刺激を与え、後には虚しく爽やかな風味だけが残った。
彼女が言った"来年も一緒に"という言葉は、やがて傷となり、私の心に住み着き離れなかった。
――『とある作家の夏の物語』抜粋
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