12人が本棚に入れています
本棚に追加
「見て、お兄さん、雨だよ!」
いつの間にか、空は灰色。
ポツリ、ポツリと雨は降り始める。
「やった! また、クジを最初から書き直しだ」
初めて、少年の少年らしい笑顔を見た。
でもやっぱり哀しい気持ちになったよ。
俺以外に、こんな気持ち与えなくていいのにさ。
少年の笑顔は、青空のおかげではない。
リセットできる、雨のおかげ。
だから少年は青色のクレヨンで線を書いていたのだから。
俺は空に、奇跡を夢見ずにはいられない。
少年の優しさが雨になって両親の元に降り注ぎますように。
どうかこの雨が、少年が描いたクジを全部流して全て消してくれますように。
少年が哀しい決断を、選ぶその時まで最後まで、夢が降り注ぎますように。
青い線が雨で消えていくのを見ながら、俺はただただそう願ったんだ。
Fin
最初のコメントを投稿しよう!