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ようやく俺の存在を認めてくれたのか、男の子は聞いてくれた。
ので、俺は頷く。
「お兄さんは、学校の先生に頼まれたんだ。君が学校に何日も来ていないからって」
「今日は、いこうと思ってたんだけどね。朝、おかあさんたちの喧嘩するタイミングが悪くって。待ってたらねちゃったんだ」
「そう。おにいさんは、君を保護しに来たんだよ」
だけど男の子は首を振る。
「ぼく、ごはんたべてるし、おふろもはいってるし、着替えも毎日あるし、おやつもたべてるよ」
「うん。君は先生にそう言っていたね」
「ぼくは大丈夫だよ」
でもね。
君は、心にご飯をもらってる?
心はお風呂は入ってる?
心は暖かい布団に包まって幸せなのかな。
「ぼく、あみだくじで決めたら、お兄さんのとこに行ってもいいけどね」
「じゃあ線を増やすかい? お兄さんのところっていう選択技を」
時間をゆっくりかけたら、きっと……選択技が広がるかも知れない。
だから、君も、まだ今まで通りに時間稼ぎしようよ。
「ありがとう。お兄さんも優しいよね」
少年らしくない笑顔で哀しくなってきた。
「あ、雨だ」
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