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信彦と晶の父親と母親は中学・高校の同級生で友達だったと聞いている。
信彦だって、晶の母親が生きていれば会いたいはずだ。晶だって信彦が母親に会いたいと言う気持ちはわかるだろう。
七海は晶がいつも信彦のことを「ノブさん、ノブさん!」と慕っていることを思い出した。
あんなに慕っているのに、信彦にあかねと故意に合わせないようにしているなんて、どんな事情があるというのだろうか。
「晶も普段はあんな感じですが、何も考えずに何かするような子ではないですしね」
「そう、ですよね……」
七海も最近晶と接していて、晶が案外「何も考えていない」わけではないような気がするのは、何となくわかって来ていた。
「何か重大な事情があるのでしょう。でも、こればかりは直接本人に訊いてみないと……。ただ、僕と母親を会わせないような魔法を掛けているとなると、何かしらの事情があるはずだから訊いたところで素直に話してくれる確率は低いですが、それでもやっぱり訊いてみましょう。訊かないうちは何も始まりませんからね」
「そうですね。あかねさんも堀之内さんに会いたいって言ってました。あかねさんも自分の記憶が途切れている間に何があったのか知りたいみたいです」
「取りあえず、明日にでも晶に訊いてみますか。――で、七海さん、一つお願いがあるのですが」
七海は「えっ?」と、信彦にキョトンとした表情を向けた。
「はい、なんでしょうか?」
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