3.

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(――あの人、昨日店の前を歩いていた女の人だ!)  晶と一緒にエレベーターを降りて来たのは、昨日、七海が「はあっ……」とため息を吐いた、あのキレイな女性だった。  二人は笑顔で何か話しながら連れ立ってビルのエレベーターを降りた。  ビルの出入り口まで行くと、女性は晶に軽く手を振って、ビルの外へと消えて行った。  七海は晶と女性の一連のやり取りに思わず心を奪われてしまった。  美男と美女……。何気ないやり取りなのに、まるでドラマか映画のワンシーンのようだ。  でも、七海は重要なことに気付くと、「ハッ」と我に返った。 (――どうして、あの女の人、昨日と同じ服装なの?!)  ビルの外に消えて行った女性の服装は、昨日七海が見た時と同じジーンズにボーダーのシャツ、そしてトレンチコートだった。  昨日と同じ服装って、それって、つまり……。 「――ああ、七海さん、おはようございます! どうしたんですか? そんなところで」  柱の影に隠れていた七海の後ろから、大きな声が聞こえてきた。  七海がギクリとして振り返ると、爽やかな笑顔を見せた信彦が自分の方に向かって歩いて来るのが見えた。  ノブさん、ちょっと空気読んでよ……と七海は思ったが、事情を知らない信彦には何のことやらと言ったところだろう。 「そうだよ、お前、さっきからコソコソと何してんだよ?」  信彦の方を振り返った七海の後ろから、今度は晶のふてぶてしい声が聞こえてきた。  晶の「さっきから」という言葉、どうも自分が柱の影から様子を伺っていたことはバレバレだったらしい。  まあ、相手は魔法使いだし、それくらいはお見通しだということなのだろうか。  振り返った七海は晶のビー玉のような瞳と目が合い、どうして良いかわからず顔を下に向けた。
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