3.

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「でも、あの女の人、堀之内さんと一緒にエレベーターから降りてきましたし、服が昨日と同じでしたし……」  七海がもう誤魔化そうとするのはやめて正直に信彦に言うと、信彦は優しそうに首を横に振った。 「七海さん、僕が前に、晶の亡くなった母親がビルの上の階にある行政書士の事務所で働いていたって言ったこと、覚えてますか?」 「はい」 「さっき晶と一緒にいた女性、その行政書士の事務所で働いているスタッフの彼女なんです」 「えっ? そうなんですか?」  七海は思わず大きな声を上げた。 「そうです。あの三人は友達なんです。その行政書士の事務所の人、このビルの一室に住んでいるんですけど、女性の服装が昨日と一緒なのは、その人の部屋に泊まったからではないでしょうか? 一か月に一回くらい、行政書士の事務所の人たちとかがみんなで集まってその人の部屋で飲むらしいんですけど、晶もお邪魔しているみたいです。で、あの女性も来たんでしょうね」  あの女性、晶と一緒に笑顔でエレベーターから降りてきたし、服装も昨日と同じだったから、てっきり晶の彼女で晶の部屋にでも泊まったのだろうと思ったのに……。  確かにあの状況ではそう勘違いしても仕方ないが、七海は自分の早とちりに、それこそ穴があったら隠れてしまいたいような気持ちになってしまった。  思わず顔が赤くなってくる。  さっきの自分の晶に対する態度、明らかに「ヤキモチ」とか「当てつけ」とかそんな感じだったではないか……。
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