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七海と信彦の行く手を塞ぐように、道路に大きな木が倒れていたのだ。
これでは、車で行くことは不可能だ。
信彦は車を停めると、木の近くへと歩いて行った。
七海も車を降りると、信彦の後に続いた。
大きな木は見事に根元からポッキリと折れ、道路を横断するかのように倒れている。
「おかしいですよね?」
七海は道路に倒れている木の端から端まで見ながら言った。「今日、風も強くないし、特に近くで木を切っている人とかもいないのに、この木、どうして倒れたりしたんですか?」
七海が不思議そうに首を傾げると、信彦は妙に真剣な表情をした。
「――あいつの仕業ですよ」
「あいつって……?」
「晶の仕業ですよ、間違いありません」
「堀之内さんの? でも、どうしてですか?」
確かに風も伐採のための器具もないのに、こんなに大きな木を根元からポキリと折ることが出来るとしたら、それは魔法使いの晶くらいなのかもしれない。
七海は前に晶が自分を助けてくれようとして、この木と同じように街灯の根元を朽ちらせて倒したことを思い出した。
でも、どうして、晶がこんな信彦の邪魔をするようなことをするのだろうか。
「多分、晶が僕に魔法をかけているんだろうと思います」
「ノブさんに、魔法をですか?」
「そうです。僕があのワイナリーに行けないように、七海さんが会ったあの『あかねさん』という女性に会えないように魔法をかけているんだと思います」
信彦は七海の方を振り返ると、ハッキリとした声で言った。「やっぱり、あの『あかねさん』という女性は、晶の母親みたいですね」
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