6. Stand by Me(スタンド・バイ・ミー)

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6. Stand by Me(スタンド・バイ・ミー)

 一週間前に訪れたワイナリーのジェラート売り場。  七海がジェラート売り場に近付いてみると、ショーケースの後ろにいたあかねが気付いて、笑顔を見せた。 「あら、この間来ていた千絵ちゃんのお友達の、七海ちゃんじゃない」  まるで子供のように屈託ない笑顔を見せたあかねに向かって、七海も笑顔を返したが、自分の笑顔が何となくぎこちないことがわかる。 (――このあかねさん、ノブさんの言う通りに本当に堀之内さんのお母さんなのかな?)  今から十五分程前。  行く手を(はば)むかのように大きな木が倒れている道路の前で、七海と信彦は「どうしようか?」と悩んでいた。  七海は車をどこかに停めて徒歩でワイナリーに行けばいいのではないか、と提案した。  多分、ここからワイナリーまでは10分も歩けば着けそうな距離である。 「いや、歩いても同じかもしれません」  信彦はそう言うと、ため息を吐いた。「歩いてワイナリーに向かったとして、この木みたいな邪魔が入るでしょう。晶の魔法は強力ですからね」  七海は初めて会った時に晶が雪を降らせたり、この間は自分を助けるために街灯を倒したことを思い出した。  見た目には「強力な魔法が使える魔法使い」には到底見えないが、晶が強力な魔法を使える魔法使いだということは十分過ぎるほどよくわかる。 「だったら、私一人で行ってみます。あのあかねさんが堀之内さんの本当のお母さんかどうか、私が確かめてきます」  そして、七海は一人で歩いてワイナリーまでやって来た。  信彦は近くのスーパーの駐車場に車を停めて、七海が戻って来るのを待っているはずだ。
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