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「こんにちは、あかねさん」
七海はあかねに軽く会釈をした。
「もしかして、千絵ちゃんに会いに来たの? ごめんなさいね、実は今日は千絵ちゃんお休みなのよ」
「いえ、違うんです。実は、その……、あっ、あかねさんに用事があって」
七海が戸惑いながら言うと、あかねは不思議そうな表情をした。
「私に?」
「はい、少し訊きたいことがあるんです」
「そうなの」
あかねはまた笑顔になると、ジェラート売り場のカウンターの奥にある掛け時計をチラリと見た。「私、もう少しで休憩時間だから、もしならその時にどうかしら?」
「ありがとうございます! すみません、休憩時間なのに……」
「いえ、いいのよ。じゃあ、少し待っててね」
七海はジェラート売り場でイチゴ味とラムレーズン味のジェラートを買うと、テラスの席で食べながらあかねのことを待った。
口の中に広がるジェラートの味に感嘆しながらも、七海の心の中は晶とあかねのことでいっぱいだ。
果たして、あかねは死んだ晶の母親なのだろうか。
信彦が月命日に毎回墓参りに行っているから、晶の母親が亡くなったのは本当だろう。
でも、顔が似ているだけならともかく、左の手の甲のやけどの痕まで同じと言うのは、さすがに偶然にしては出過ぎている。
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