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「――七海ちゃん、お待たせ」
声を掛けられて七海が振り返ると、あかねが左手にジェラートを持ちながらやってくるところだった。
七海は思わず、ジェラートを持っているあかねの左手のやけどの痕に注目してしまい、慌てて視線を逸らした。
「本当にすみません、休憩中なのに……」
「いいのよ。じゃあ、どこで話しましょうか?」
「じゃあ、あそこで」
七海はひと気のないテラスの隅の方を指さした。
人に聞かれても聞いた人は何の話かわからないかもしれないが、やはり人に聞かれない方が良いだろう、と七海は思った。
七海とあかねはテラスの隅のベンチに並んで座った。
(――キレイな横顔)
七海は嬉しそうにジェラートを食べているあかねの横顔を見ながら心の中で呟いた。
そして、ふと晶と初めて会った時も、晶の横顔を見ながら(――キレイな横顔)と心の中で呟いたことを思い出した。
前に信彦が見せてくれた晶の家族写真を見る限り、晶は父親に驚くほどそっくりだったから、顔立ちを見ただけではあかねが晶の母親なのかどうかはわからない。
でも、晶とあかねはどことなく似ている雰囲気を持っているような気もするのも確かだった。
晶もあかねも、何というか子供っぽい感じがする。
あかねは見た目の年齢からして、七海の母親や信彦と同じくらいの年齢だろう。七海は自分の母親と信彦とあかねを比べてみると、あかねは本当に子供っぽいというか純粋な感じがするな、と思った。
今、ジェラートを美味しそうに食べている姿も、まるで子供が自分の好物を食べているかのようだ。
七海はあかねがジェラートを食べている姿を見ながら、晶が子供のように瞳を輝かせながらホットケーキを食べている姿を思い出さずにはいられなかった。
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