31人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
七海はいろいろと考えながら、信彦が待っているであろうスーパーの駐車場まで急いだ。
スーパーの駐車場に着くと、七海は隅に停めてある信彦の車の窓ガラスをコンコンとノックした。
「――ああ、七海さん、お帰りなさい。どうでしたか?」
助手席に入ってきた七海に信彦が訊いた。
信彦の顔は、いつになく真剣な表情だった。
「あの、やっぱり、あのあかねさんという方、堀之内さんのお母さんみたいな感じがします」
「何かわかったんですか?」
七海は信彦にあかねの記憶がないこと、あかねの記憶が途切れたのは晶の母親が死んだ時期と同時期だと言うことを話した。
「――何てことだ」
信彦も七海の話を聞いて驚いた様子だった。
「やっぱり、あのあかねさん、堀之内さんの亡くなったお母さんなのでしょうか?」
「顔がそっくりだというだけなら、偶然もあるでしょう。でも、左手の甲のやけどの痕が同じで記憶が途切れた時期も同じ、そして僕がそのあかねさんが働いているワイナリーに絶対行けないようになってしまっているとなると、これはやっぱりあのあかねさんが晶の母親で、晶はそのことを隠しているとしか思えないですね」
「そう、ですよね。でも、どうして堀之内さんはお母さんが生きていることを隠しているんでしょうか? ノブさんにも言わないで、しかもノブさんとあかねさんが会えないようにしているなんて……」
最初のコメントを投稿しよう!