6. Stand by Me(スタンド・バイ・ミー)

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 翌日の木曜日。  七海がいつも通り「Tanaka Books」でレジ業務や本の整理をしていると、店の奥から「ガツガツ」と大きな足音が聞こえてきた。 「――お腹空いたーっ! ホットケーキ作れよ!」  晶がいつものようにふてぶてしい表情で七海に言って来た。  七海は昨日のあかねのこともあって複雑な気持ちだったが、いつもと同じように「わかりました」と返事をすると、店の奥の給湯室へ行って、いつもと同じようにホットケーキを作り始めた。 (――ノブさん、あかねさんのこと、どんな感じで訊くつもりなのかな?)  信彦は「訊いたところで素直に話してくれる確率は低いですが」と言っていたが、あの晶が信彦に「素直に話さない」ことなんてあるのだろうか、と七海は思った。  晶は七海には「ふてぶてしい」感じではあるが、信彦には相当懐いている。  まあ、亡くなった両親の友だちだし、ただでさえビルの外に出られない晶が唯一頼れる人物だから、懐くのも当たり前のような気がするが……。  晶がそれこそ信彦に「反撥(はんぱつ)」めいたことを言ったりした時と言えば、晶がなぜかビルの外で魔法が使えた時だけだ。  信彦が「お前、やっぱり、ビルの外で魔法が使えないのがどうしてか知ってるんじゃないのか?」と訊くと、晶は「知らねーよ! ノブさん、それ何度も言ってるだろ? そんなん知るかよ!」と子供のように()ねた表情で、ムキになって否定していた。  あの時、七海はやっぱり信彦が言う通り晶は「ビルの外で魔法が使えない理由」を知っているのだろうかと思ったが、姉の六華(むつか)の話をし始めてしまったので、その「ビルの外で魔法が使えない理由」の件は、結局あやふやになってしまったままだった。  晶はどうしてノブさんに「ビルの外で魔法が使えないのがどうしてか知ってるんじゃないのか?」と訊かれた時に、あんなにムキになって否定したのだろうか。  そして、「ビルの外で魔法が使えない」はずの晶が、なぜあの時だけビルの外でも魔法が使えたのだろうか。
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