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七海が会社に着いてみると、何やら会社のドアに張り紙が貼ってあった。
何だろう? と七海が張り紙を読んでみると、難しい言葉でいろいろと書いてある。
告知書、破産者、手続開始、占有管理……。
(――えっ?)
七海は慌ててドアノブをひねってドアを開けようとした。
いつもならすんなりと開くはずのドアが、いくらガチャガチャやっても開く気配がない。
「――あっ、石橋さん」
七海がしつこくドアノブをガチャガチャやっていると、後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると、同じ会社の男性営業スタッフだった。
「すみません! これってどういう……」
「どうもこうも、そういうことみたいなんだよ」
男性営業スタッフは頭を抱えながらため息を吐いた。「会社、倒産したみたいなんだ」
(そんな……)
数十分後、七海は重い足取りで、さっき歩いて来たばかりの通勤路をトボトボと歩いていた。
男性営業スタッフに「その内、連絡が行くと思うから、取りあえず今日は帰って良いと思うよ。俺も帰るし……」と言われて帰路についたものの、足取りは重い。
確かに最近、人が辞めたり残業代が払われなかったりなど、「おかしいな?」と思うこともあった。
でも、まさか急に会社が倒産するなんて……。
これからどうしよう、と七海はため息を吐いた。
(――職場が倒産したら、すぐに失業保険がもらえるんだっけ?)
でも、失業保険をもらうよりも働きたい、と七海は思った。
何もしないで家でブラブラしているのは避けたかった。
考えながら歩いているうちに、七海はさっき歩みを止めた雑居ビルの前まで来た。
ふと横を見ると、本屋のドアに貼ってある「短期スタッフ募集中」の小さなポスターが目に入る。
(――これだ!)
七海は思わず頷いた。
次の就職先が見つかるまで、この本屋で短期バイトしたらどうだろう? ここなら倒産した会社と同じ通勤路だし、読書が好きな自分にはピッタリの職場だ。
しかも、ちょうど「短期スタッフ」の募集だし……。
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