31人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当は僕、『魔法使いジョニー』シリーズみたいなファンタジー小説が書きたかったんです。でも、賞を獲った友達の小説が純文学だったから、そういう純文学小説を書くようにって編集の人に言われて。だから、ずっと新しい小説のことを考えたり書くフリをしながら、自分の好きなファンタジー小説を書いていたんです。この店で小説書いていたのも、編集の人に小説を書いているってアピールをするためで……。
でも、やっぱり自分の好きに書いた小説は、前の小説と内容も違うし文体も違うから編集の人には見せられなくて。石橋さんに『小説の登場人物に出てくると面白いような、強烈なキャラクターの人とか、いますか?』って、訊いたのも、『何かお手伝い出来ることって、ありますか?』って訊かれてどうすれば良いのかわからなくてとっさに言ってしまって……。
最後に雑誌に発表した短編は友達が書いたプロットの内容を元に、僕が友達の文体に似せて書いたんです。新しい小説を書くのは、あれが精いっぱいだったし、もうウソをつくのは止めにしようと思いました。
あんなに親身になってくれたのに、本当にすみませんでした。どうしても謝っておこうと思って、こんな話をしてしまってすみません……」
再び頭を下げた葉月を見て、七海はキャラクターの話をした時に葉月が、自分から話を振ったにも関わらず、その後あまり小説のことを口にしなかったのはそのためだったのか、と悟った。
七海は葉月にどう声を掛けて良いのかわからなかった。
裏切られたような気持ちだと正直に言えば良いのだろうか。
それとも、葉月が盗作したことをずっと悔やんでいたことを同情するべきなのだろうか。
それとも……。
最初のコメントを投稿しよう!