2. Songbird(ソングバード)

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 七海は思わずビクッとして、ドアの方を見つめた。  もしかして晶なのだろうか、とも思ったが、ドアが開いて晶が入って来る気配はない。  そうすると、ドアの向こうで何か落ちたりしたのだろうか。  七海は部屋の奥のドアを開いた。  七海の身体に夜風が当たる。  ドアを開けると、そこにはビルの屋上の風景が広がっていた。 (――あれっ?)  七海は思わず後ろを振り返った。  後ろには階段がある。 (――私、いつ階段登ったっけ?)  いや、さっきまで自分は店の奥の本を自由に読めるスペースにいたはずだ。  前にもこういうことがあったな、と七海は思った。  初めて「Tanaka Books」に来た時、晶が魔法使いだと信じられないと言った自分に晶が雪を降らせた、あの時だ。  ――と言うことは。  七海は屋上に入ると、キョロキョロと辺りを見渡した。  屋上の端っこの方に見覚えのある人影を見つけた。  アディダスのスニーカーにリーバイスのジーンズを履き、カーキ色の薄手のモッズコートを羽織っている。晶だった。  晶は片手に持った缶のギネスビールを飲みながら、ぼんやりと夜空を眺めていた。
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