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「――よお」
晶は屋上の入り口で立ち止まっている七海に気付くと、声を掛けた。「お前、何で屋上に来てるんだ?」
「わっ、私だって知りませんよ。片づけしてたらドアの向こうから物音がして……。で、ドアを開けたら屋上だったんです!」
七海は言いながら晶に近付いた。
ふと、歩いている七海の視界の端に、スーッと光の筋が通り過ぎる。
(――あっ、流れ星)
七海は慌てて夜空を見上げた。
夜空を見上げた七海は、思わず息を飲んだ。
何てキレイな星空だろう。
宝石のように輝く大小の星が、夜空いっぱいにひしめき合っている。
七海はしばらく夜空に見とれていたが、今見ている夜空がいつも自分が見ている夜空と違うことに気付いた。
「えっ?!」
七海は夜空の低い位置で十字に輝く星の配列を見て、思わず声を上げた。「ちょっと待ってください! あれって、南十字星じゃないですか?」
「そーだけど。お前、意外と詳しいんだな」
「『魔法使いジョニー』シリーズに出て来たから知ってるんです! って、そういう話じゃなくて、南十字星なんて、このN県じゃ絶対に見られないじゃないですか、どうして……」
「まあな。でも、沖縄の宮古島だと見られるんだぜ。知ってたか?」
晶が得意げな顔で言いながら、ギネスビールを一口飲んだ。
なるほど、そういうことか、と七海は思った。
この星空は沖縄の宮古島の星空らしい。もちろん、晶が魔法で見せているのだろう。
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