2. Songbird(ソングバード)

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 七海は「魔法使いジョニー」シリーズの、自分のお気に入りのエピソードを思い出した。 -------------------  王女の200歳の誕生日。  盛大な誕生日パーティーが開かれるが、王女はどことなく浮かない顔をしている。  魔法使いのジョニーがパーティーに来てくれないからだ。  毎年、王女はジョニーを自分の誕生パーティーに招待しているが、ジョニーが来たことは一度もない。  200歳は王族の成人の年齢。そんな記念の日にもジョニーは来てくれないのかと、王女は心の中でため息を吐いた。  パーティーが終わって王女が部屋に戻ると、部屋の窓をノックする音が聞こえる。  窓を開けると、ジョニーがいた。  ジョニーは王女に誕生日のお祝いを言うと、夜空を見るように言って、その場を立ち去る。  ジョニーが去って行った後に王女が夜空を見上げると、この国では絶対に見ることが出来ない、南十字星が輝く南国の星空が広がっていた……。 -------------------  七海はそこまで「魔法使いジョニー」のエピソードを思い出して、「ハッ」と我に返った。  そして、ブンブンと頭を横に振った。  これじゃあ、まるで、魔法を使って南国の星空を見せている晶が魔法使いジョニーで、星空を見て感動している自分が王女みたいではないか。  あの「魔法使いジョニー」シリーズの話、言わないだけでジョニーは王女に、王女はジョニーに恋心を抱いているという設定なのに……。
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