2. Songbird(ソングバード)

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「――お前、何やってんの?」  晶に話しかけられて、七海は慌てて「何でもありません!」と言った。 「何でもありません! ――で、でも、何で宮古島の星空なんて見てるんですか?」  七海は話題を逸らそうとした。 「別にいいじゃん。いつも同じ星空だと()きるんだよ。それに、俺、宮古島なんて行けねーし」  晶はそう言うと、手元のギネスビールを一気に飲み干した。  そうだった……、と七海は思った。  晶はこのビルから出ると魔法が使えなくなるから、ビルの外に出られないんだった。  宮古島なんて、そう滅多に行ける場所ではない。  宮古島に行かないで一生を終える人なんて、日本中にそれこそたくさんいるだろう。  でも、宮古島に「行かない」のと「行けない」のとでは、意味が違う。  七海は「俺、宮古島なんて行けねーし」と言った晶の言葉に、晶の今の状況の重さを感じたような気がした。  それにしても、何度も思うが、どうして晶はビルの外では魔法が使えないのだろう。 「――あの」  七海は晶に話しかけた。 「何だよ?」  晶は飲み干したはずのギネスビールの缶のプルタブを抜きながら、七海の方を見た。  ビー玉のような晶の瞳が、七海の方を真っすぐに見ている。  七海は思わず目を逸らした。なぜかわからないが、やっぱり「どうしてビルの外では魔法が使えないのか」と訊けないような気がした。
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