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「あの……、葉月さんのことなんですけど」
七海は慌ててまた話題を逸らし、もう一つ気になっていたことの方を訊いてみた。
「ああ、あいつのこと?」
「もしかして、堀之内さん、葉月さんが友達の小説を盗作したことを知っていたのかな、と思って」
「知るか、盗作とか」
「えっ? 知らなかったんですか?」
「お前さあ、俺が魔法使いだからって、あいつの心の中が読めるとか、そういうこと考えてねーか?」
「えっ? 人の心の中とか読めないんですか?」
魔法使いなのに、と七海は心の中で付け足した。
「もちろん、読めるさ」
晶はそう言うと、七海の顔に手の平をかざした。「こうやると、読めるんだよ」
「えっ? ちょっと、何するんですか?!」
七海は晶の手の平から顔を背けた。
「お前の心の中なんて読まねーよ、読んだってつまらなそうだし。って、言うか、よっぽどのことがないと、人の心の中なんて読まねーよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって……。お前、人の心の中なんて読んでも、良いことなんてねーんだよ。余計なことなんて、知らない方がいいんだって。そこら辺の『普通の人間』でも時々心の中、読めるようなヤツもいるけど、大体暗い顔してうつむいてるしさ。まあ、開き直ってるヤツもいるにはいるけど」
その「普通の人間」って、超能力者とかいう人間なのだろうか、と七海は思った。
人の心の中が読めるなんて便利そうな感じもするけど、と七海は心の中で首を傾げた。
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