4. Some Might Say(サム・マイト・セイ)

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4. Some Might Say(サム・マイト・セイ)

* * * * * (――今日もホットケーキ、作ろう)  七海は重い足取りでキッチンへと向かった。  毎日ホットケーキを作るのが、最近の七海の日課になっていた。  毎日毎日、「こうすればもっと美味しくなる」「こうすればもっと見た目が良くなる」とあらゆる工夫を凝らしている。  自分でも日に日にホットケーキを焼く腕があがっていることがわかる。  でも、自分のホットケーキが美味しそうに出来上がるのと、食べてもらえることは、どうも別問題のようだった。  食べてもらえるかどうかわからない、それでも、七海は毎日キッチンへ向かってホットケーキを作っていた。  わずかな望みに希望を託して。 (――今日はこっちの青いパッケージのホットケーキを試してみようかな)  七海はキッチンの戸棚の中をゴソゴソとしながら、青いパッケージのホットケーキの素を取り出した。  ホットケーキの素と卵と牛乳をボールで混ぜて生地を作り、熱したフライパンで焼く。  キッチンいっぱいにホットケーキの甘い香りが漂って来る。  出来上がったホットケーキを見て、七海は我ながら良い出来だ、と思った。  ホットケーキの素のパッケージ写真のように、ふっくらとしていて適度な焦げ目もついていて完璧だ。  いや、パッケージの写真よりも自分の作ったホットケーキの方が美味しそうに見えるかもしれない。  七海は出来上がったホットケーキにバターとメープルシロップを掛けると、「今日こそは食べてくれるかもしれない」と期待しながら、二階へと運ぼうとした。 「――サンキュー」  後ろから声が聞こえてきて、七海が持っているホットケーキの皿を誰かが取り上げた。  七海が後ろを振り返って見ると、フォークを持った晶が七海の焼いたホットケーキを食べようとしているところだった。 「待ってください、堀之内(ほりのうち)さん!」  七海は晶に向かって大声を上げた。「そのホットケーキ、堀之内さんに焼いたんじゃないです。それは……」
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