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夏が終わるまで
「……夏だな」
「おー……夏だ」
土手沿いを歩きながらしみじみと呟けば、隣を歩く幼馴染が何の感慨もなく繰り返した。今年は梅雨らしい梅雨を過ごすことなく、夏に突入した。今朝の天気予報では、八月上旬並みの暑さだと告げ、熱中症には充分気をつけてくださいと注意喚起が流れていた。
去年、向かいに独りで住むジイさんが倒れてからは、ご近所さん同士で熱中症予防運動に励んでいる。俺たちが住む地区はとくに一人暮らしをしているお年寄りが多いから、朝夕誰かしら声を掛けに行く。
畑や田んぼを続けているジイさんバアさんばかりで、大抵朝夕に外に出ているので見つけやすい。生まれたときからこの土地で暮らしている俺たちは、ほとんどのジイさんバアさんと顔なじみだ。
今朝も、学校に向かう途中で、畑仕事帰りのジイさんと言葉を交わした。八十を越えるというのに、そのジイさんときたら、いまだに背筋がピンと伸び、「おう、坊主ども。気をつけてなあ!」と張りのある大声で送り出す。俺が「ジイさんも側溝に落ちるなよ!」と返せば、けらけらと笑った。
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