First Holiday

4/30
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
 不思議そうにおれの顔を見上げる小童は少し勝気ではあるが美麗に整っていて、愛くるしく目をくりくりとさせた誠ミニマムな容貌と容姿。  目の錯覚かと疑うほどに似ているのだ──秋良と。 「ぐふっ」  半口をあけ呆然とするおれの腹に重いこぶしを入れると、秋良二号(仮)が尚も不思議そうに様子うかがいをする。 「ねえってば、ちょっと聞いてる? オッサンだから耳まで遠いの」 「……──い、いや、しかと聞こえているぞ。すまなかった、あまりにもおまえが知己(ちき)に似ていたのでな、少しばかり驚いてしまったのだ」 「ふーん、そうなんだ。どうでもいいけどさ、その”おまえ”って呼ぶのやめてくれない。ぼくはレイモンド・シェール、レインと呼んでよ。ねっ、オッサン」  あざとく小首をかしげる様子が何とも可愛らしい。  レイン。雨──か、よい名ではないか。ちょうど雨も降っていることだ、誠お誂え向き─── 「って、にゃにおうっ!! オッサンオッサンと連呼するでない。おれとてそんな不名誉な名ではない、おれには薫 基睦という誠立派な名があるのだ」 「へへっ、基睦か。けどさ、ぼくよりも年上だよね。だったらやっぱオッサンじゃん。まあいいや、よろしくね、基睦」 「ぐぬぬ……」  あまりの無礼ものど元過ぎれば何とやら。清々しいほどの悪態小童をまえに、ひとつも言い返せない己が歯がゆく頬がひきつる。  ともあれだ、それがおれとレインとの出逢いだったのだ。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!