Last Holiday

23/30
前へ
/82ページ
次へ
 からからと楽しそうに笑うレインが憎い。握り飯はバスチアンの意趣返しかと思っていたが、まさかこやつのイタズラが原因であったとは。  ここはきつくお灸を据えてやらねばいかんが、しかし今は話の趣旨が違うのだ我慢する。大人の余裕を見せるとき、悔しさをぐっと堪えると本題に入る。 「ときにレイン。ミドルスクールからハイスクールに進学して落ち着いたら、夏休みにでも日本へいってみるか。おれの両親や兄にも紹介したいし、それに大切な家族であるイケ部──」 「ねえっ、秋良に逢える?」  おれの話を遮ると目を輝かせてレインが問う。 「無論だ。寧ろそれが一の目的、きっと秋良はレインにとってよき親友となってくれるぞ」 「そうかな、そっか……だったらうれしいな。ぼくね、血のつながった人と逢ったのってパパだけだから、本当いうと淋しかったんだ。ああ、言っとくけど少しだけだよ。ぼくは強いんだ。 けど秋良に逢ってみたかったから楽しみ。だってさ、ぼくと同じ顔してるんだよ、逢えばきっと驚いちゃうよね。仲良くしてくれるといいな。あっ、でもでも……嫌われたりしないかな」  機関銃のように話しては笑ったり眉を下げてみたり、ころころと表情を変化させるレインが愛しくて可愛い。そうか秋良に嫌われやしないかと心配して……、ならば小さな不安など払拭してやろう。 「そんな心配は無用だ。秋良は心優しい子だ、必ずやレインを好いてくれる。それにおまえたちは従兄弟なのだ、尻尾が絡み団子結びするほどに馬が合うだろう」 「なにせ秋良は──」と言いかけたところでレインの表情が曇るのに気づく。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加