86人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたのだ」
「……基睦は秋良のこと信頼してるんだね」
なにを今更なことを。秋良とは大学生活を通してつき合ってきたのだ、当然あやつの人となりはよく理解しているつもりだ。それを伝える。
「秋良とは大学のサークルでともに過ごした仲間、無論のこと全幅の信頼を寄せている」
「だよね。でもさ、それって仲間ってだけじゃないでしょう?」
「どういう意味だ」
「分かってるくせに。基睦は秋良のことが──好きなんだろ」
「───っ」
息を呑まされてしまう。
見ればいつしか大きな瞳に涙をいっぱいに溜め、それを溢さぬよう必死と口唇を噛みおれを睨む。そして立ち上がるや「基睦のばかっ」とおれにタオルケットを投げつけ走り去ろうとする。
「待てい」と呼びとめるより先に身体が動く。
レインの腕を掴むと胸にとじ込め、息が止まりそうなほどに細っぽちな身体を抱きしめる。その温かさ、髪の匂いと伝わる鼓動。
愚鈍なおれにもわかったぞ。レイン、おまえの気持ちが───
最初のコメントを投稿しよう!