Last Holiday

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「レイン、おれはおまえが好きだ。たぶん初めて逢ったときから、ずっとおまえの虜なのだ。もっとも出逢いが衝撃的だったのでな、鈍感なおれはそれに気づかなかった。 レインと秋良は似ている、双子の兄弟のようにな。故におまえと秋良を重ねて見ていたことは否定せん。指摘どおり、おれは秋良に惚れていた。この地(ニューヨーク)にやってきたのも、苦しい想いから逃げてきたのかもしれん。 だがそれも過去のこと。おまえと知り合い過ごすようになって、秋良の呪縛から解き放たれたのだ。少なくとも以前のように、ここ()に走る痛みは感じない。 おれを救ってくれたのはレインだ、頑是ないおまえの存在が不毛な恋から卒業させてくれた。もう過去には囚われはせん、おれはレインと生涯を歩みたいのだ。想いが伝わらないのであれば何度でも乞う、おれはおまえのことが好きだ」 「レインを愛しているのだ。どうかお願いだ、おれを世界一幸せな男にしてくれ」──薫 基睦、一世一代の大告白を決めた。  あとは最後の審判を待つのみ。レイン──おれの想いに応えてくれ。  レインの身体から震えがとまった。少しの沈黙、ブルックリン・ブリッジより届く車の音。すべてが溶け合い鼓膜を刺す耳鳴りへと変化していく。 「……ひとつだけ教えて」  緊張の糸を切るようにレインがつぶやく。
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