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学友たちの影響もあるだろうが、おれが思うに元来レインは瀟洒な気質なのだ。未来はクリエイティブな仕事に就くかもしれん、ならばおれは全面的に応援してやりたい。
内側から光り輝く小生意気な青年を眇め見ながら、これも親馬鹿というのか我がことのように誇らしく思ってしまう次第だ。
「ではゆくぞ」
「うんっ」
敏捷な猫のようにおれの脇をするり走り抜けると、レインはひと足先にエレベーターの許へ向かい「基睦、ほら早くっ」と手招きする。
「こりゃ、待たんかっ」
「ったく遅いよ、おっさん」
「にゃにおうっ!」
小悪魔が羽を広げておれを魅了する。この幸せがずっとつづくよう、せいぜいおれはレインの手のひらで踊るとしよう。
秋良にレインを紹介する旨は父殿から了承を得ている。もっとも初めは烈火のごとく感情を爆発させ、断固として拒否をされたものだ。
けれどおれは諦めなかった。レインはもう涙する過去の少年ではない、今や破竹の勢いで成長する名実ともに素晴らしき好青年なのだ。
たとえ生まれに憂いがあろうとも、人となりとは環境が人格を育む。氏より育ち、秋良と同じ血を分かつレインであれば、何も案ずることはないと再三説得をした。
秋良も口添えをしてくれたことが功を奏したようで、ようやく今般の顔合わせと相なったのだ。ちなみにではあるが、秋良に斯く斯く云々説明してくれたのは伊織。感謝の言葉もない。
すべての者がレインの味方でいてくれる、誠有り難いことだ。無論おれこそが最上の味方、レインにとってのヒーローなのだ。
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