Last Holiday

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「ねえ基睦。日本てどんなところ?」 「うむ、そうだな。他の者を大切に思う情深き国民性、サムライ・フジヤマ・スシ・ゲイシャ云々かんぬん。あとはおまえの目で見て学べ」 「へえ……。やっぱ日本てさ、噂に聞くとおりインパクト大爆発な国なんだね」  おれの説明に神妙な表情で考え込むレイン。なんと愛らしいのだ。  悟られぬよう笑いを堪えていれば、助手席から「あまりレイン様に妙なことを教えないで下さい」とバスチアンの小さな注意の声が届く。 「心にとどめておく」  などと心にもないことを返してうそぶく。誠楽しい。  きっとレインにとって日本が第二の故郷となるだろう。そして必ずやイケ部のメンバーがレインにとって今生の友となるはず。おれは断言するぞ。  なぜならば彼らはおれにとってかけがえのない家族だからだ。 「基睦」 「なんだ」 「手……つないでいい?」 「うむ、遠慮など要らんぞ。ほれ、たんと握れ」 「たんと握──うわあ、最悪な表現。やっぱり基睦ってデリカシーなさすぎ」  ぷいとそっぽを向くレイン、なにやら怒っているようだ。やはりレインの心と秋の空は── 「むむ。へそを曲げるわりには握るのだな」 「もうっ。だから、その言いかたやめてっ」  頬を膨らませ真っ赤となりながら憤る。けれど手より伝わる柔らかな熱が、表情とは裏腹におれを「愛している」と物語っていた。  遠く彼の地を眺めると、「日本に着いたら寿司でも食いにいくか」とひとつ。それからレインの耳もとに口唇をよせ、「おれも愛しているぞ」と反撃しておいた。  まだまだレインには負けんぞ。それはどうしてか、ならば教えてやろう。おれがイケ部の元部長にして父であり長だからだ──────  Last Holiday/基睦のRoman Holiday/完
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