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レインに泣きわめかれてしまっては途方に暮れるしかない。
仕事終わりのオフィス街とはいえ外野は多く、周りに群がる者はみなおれを子供を泣かす外道のような目で見る。
さすがに居た堪れなくなってしまい、つい余計なことを口走ってしまったのだ「アパートに来るか」と。
それまでナイアガラの滝が如く滂沱の洪水だったのがぴたりと止み、すぐさまレインは目を輝かせ「うん、いくっ。えへへ」と無邪気に笑い抱きつかれた。
不覚にも胸が躍り血圧が上昇したではないか。いや、ただの不整脈に違いない。秋良以外がおれの心に侵入するなどありはしないと納得すると、レインの頭をわしゃわしゃ撫で倒し「ついて来い」と歩きだす。
途中で総菜屋に寄り夕飯を仕入れて帰る。
今日はレインも含め三人分のメインディッシュを購入、店主のマダムに「おや今日は可愛い子を連れてるねえ」と冷やかされ言い訳に努めた。
その後はアパートまでの道のりが多少気まずかったもの、となりを歩くレインはおれの気も知らずに鼻歌まじりときた。やれやれ、やはり小童に関わると疲れるぞ。
「ここがおれのアパートだ」
日本人向けに建てられたセキュリティーの高いアパートメント。比較的新しい建物だが景観を損ねぬようビンテージ加工が施された外装で、見た目には歴史ある建物に溶け込んでいる。
「へえ、いいとこに住んでるじゃん。基睦って金持ちなの?」
「ぬっ、おれは一般所得者だ。要らぬことを言ってないでついて来い」
置いてくぞと脅してやれば、「ただ訊いただけじゃん。オッサンのケチンボ」と返ってきた。どうでもいいが、そろそろオッサンはやめてくれないかと心で泣いておく。
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