第一幕

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第一幕

 カゲオが派手に転んだ。  前にいたマルオとネクラにぶつかり、雪崩を打って倒れこむ。  それを見て笑うバカナコ。  あきれるワルヒト。 ……という形にきれいに決まったかに見えたが、リーダーのワルヒトの目には物足りなく映ったようだった。すぐに罵声が飛んだ。 「バカヤロー! 間が悪いんだよ。間が悪い奴のことを間抜けと言うんだ! この間抜け野郎!」  慌てて、カゲオたちは立ち上がり、もう一度、同じ動きを試す。しかし、今度はマルオのテンポが一歩遅く、形が崩れた。 「このデブ! 立派なのは身体だけか! 腹の脂肪が頭にまで回ったのか!」 ワルヒトの罵声は冴え渡る。 「バカナコ! 女だからって甘く見ると思うなよ!」 「ネクラ! おまえはそんなだから、いつまでも成長しないんだ!」  ワルヒトのメンバーへの罵倒は止むことがなかった。 そのあと、同じ動きを一○回ほど繰り返して、ようやくOKが出た。 皆、汗と疲労だらけだった。 「畜生、ワルヒトの奴、言いたい放題言いやがって!」 ロッカーを蹴飛ばしながら叫んだのはネクラこと根本蔵夫だった。 体格のいいネクラがしょっちゅう蹴飛ばしているので、ネクラのロッカーはいくつもへこんだ跡がある。     
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