第一幕

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「あんな言い方しなくてもいいのにな……」 カゲオこと影山忠男はつぶやいた。 「あいつは苗字からしてサドだからな。サド体質が身についてやがるんだ」  普段、あまり怒りの感情を出さないマルオこと丸山明男までが悪態をついた。  「あいつ」とはリーダーのワルヒトこと佐渡晴人のことだった。  彼らはコント芸を中心とするお笑いグループ「アクト・ナチュラリー」のメンバーだった。 ワルヒト、マルオ、バカナコ、ネクラ、カゲオ……元々はグループ名も固定されず、メンバーもその場限りで替わるようなグループだったが、紆余曲折があってこの五人に落ち着いた。 五年前まではバカナコではなく、松倉佐喜男、通称「お先真っ暗」というメンバーがいたが、カゲオ以上にセンスが悪く、ワルヒトから特別罵倒されていた。結果、シゴキに耐えられず、地方での営業中に「ボクは人間らしい生活がしたい」と置き手紙を残して逃げ出した。     
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