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カゲオの代わりを今回はマルオが務めていたが、普段ボーッとしているだけのマルオでは、いじめられっ子特有の卑屈さや悲壮感が足りなかった。そもそもマルオはセリフ覚えも悪く、長いセリフをしゃべることもないし、動きも鈍重だった。普段、楽をしているのだからカゲオの分も働けということなのかもしれないが、この役はあまりにも酷だった。
音声担当が笑い声を入れていたが、どこか不自然だった。
カゲオ謹慎後初の放送だったので、視聴率そのものは高かったようだが、評判はあまりよくないようだった。
「おもしろくない」
「アクナチ劇場、打ち切ったほうがいいんじゃない?」
「マルオは演技がヘタ」
「マルオ死ね!」
などと、ネット上での評価は散々だった。
翌週はバカナコがいじめられ役を演じていた。四人の中では器用なほうであるバカナコだったが、それでも、普段のキャラクターと違う役を演じさせるのはあまりに気の毒だった。
不評が制作側に届いているのか、自分たちで気づいたのか、次の週はゲストの人気俳優がカゲオの役を演じていた。さすがに演技はうまかったが、逆にうますぎてどこか違和感があった。その次の週もゲストがカゲオの役を演じていた。そのやり方でカゲオ不在の間を凌ぐことにしたのだろうか。
とはいえ、そもそもカゲオが復帰できるかどうか不明だった。
そのうち誰かがフィットして、自分に立ち代わるかもしれない。そのとき自分はどうなるのか。考えれば考えるほど不安になった。
食欲があまりないので、ひと月も立たないうちに体重が五キロほど落ちていた。
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