100年前の遺品

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 これは私が体験した、恐くてちょっとワクワクしたお話。     ◇◆◇  私のご先祖様は代々、王家に使えていた。 でも、それももう古い話で、私には関係のない話だ。 なんせ王権政治が行われていたのは、100年も前のこと。  今、この国は宗教で治められている。 歴史上、最後の王様には子どもがいなくて養子を取ったものの、病死してしまい、後継者争いが起きたそうだ。 それで結局、政権を人が握るのは良くないということになり、神様に返そうという話に収まったのだと聞いた。  王家が滅びれば、召し使い達も用済みになり、私達のご先祖様は、城下町から少し離れた村に移り住んだ。 それが今、私達が暮らしているマペナ村だ。  この村は城下町に近いこともあり、住民は少ないけれど旅人が多いので、商いが盛んに行われる活気のある村だ。  私の家も時々、宿屋から溢れた旅人を泊めることがあるので、色々な話を聞く機会があった。 旅の途中で遭遇した魔物の話やその魔物との戦闘、遠方の風景や文化、美味しい食べ物の話――  どれもとても面白くて、私はいつも心を踊らせながら聞いていた。  だけど、彼らと過ごした数日は、そんな話よりもうんと私の心を揺さぶった。
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